Non-Engineered 住宅の耐震化
現在、アジア・太平洋地域の都市部における、多数の耐震基準を満たさない Non-Engineered 住宅の存在は、防災上、緊急に検討しなければならない課題の一つです。特に開発途上国においては、単に過去に建設された住宅の耐震化の問題だけでなく、現在も次々と、これら不良ストックが建設され続けている点にこの問題の深刻さがあります。これら Non-Engineered 住宅の中でも、RC のフレームに壁用のブロックを積み上げた構造形式(枠組組積構造、以下 RCFM造と記す)を用いた2-3階建て住宅は、庶民住宅として東南アジアから西アジア地域に広く普及しており、その事実によって過去の地震災害において多くの被害が発生してます。特に、都市部における低所得者層の RCFM造住宅は、構造設計上のみならず施工上も多くの問題点をかかえていると認識されているにも関わらず、その実態はほとんどあきらかにされていません。本報告では、科学技術振興調整費「アジア・太平洋地域に適した地震・津波災害軽減化技術の開発とその体系化に関する研究」の一環としておこなわれた、フィリピン・マリキナ市を事例とした RCFM造 Non-Engineered住宅の耐震性能評価について報告します。
本研究は、工学研究者と人類学研究者との共同研究によって、現地に受け入れ可能で、かつ コストや工期増を最低限に抑えた工法の提案をすることがはじめて可能になったと考えています。このような共同研究体制は、防災研究にとってきわめて新しい試みであるが、今後の、特に開発途上国の防災問題の解決に大きく貢献するものと期待されます。